成年後見制度の現状
(1)利用者数
最高裁が公表している統計数値によると、現在、日本で成年後見制度を利用している人は約25万人です(成年後見関係事件の概況-令和4年1月~12月.最高裁判所事務総局家庭局より)。
人口の1%は成年後見制度の利用が必要だといわれていることからすると、実際の利用は低調といえます。
(2)利用する原因
成年後見制度が利用される原因としては、認知症が最も多く(全体の約63.2%)、次いで、知的障害が約9.4%、統合失調症が約8.7%の順となっています。
(3)利用する年齢
ご本人の年齢は、男性では、80歳以上が最も多く(全体の約35.0%)、次いで70歳代が多くなっています(約28.2%)。
女性でも、80歳以上が最も多く(全体の約63.8%)、次いで70歳代が多くなっています(約19.4%)。
(4)申立の動機
成年後見制度を利用するには、家庭裁判所への申立が必要ですが、申立の動機としては、預貯金等の管理・解約が31.6%と最も多く、不動産の処分(11.9%)と合わせると、実に半数近くが財産の管理・処分のためであることが分かります。
その他は、身上保護(24.2%)、介護保険契約(14.0%)、相続手続(8.5%)の順となっています。
(5)時代による変化
1.統計は、成年後見制度が施行された平成12年から存在しますが、どんな人が申立てているかを見ると、平成12年には、ご本人の子が約40%と最も多かったのに対し、令和4年になると、市町村長による申立が23.3%と最も多くなりました。
市町村長による申立は平成12年当時は僅か0.5%にすぎなかったので、変化の大きさが分かります。
2.また、実際に成年後見人等になっている人をみると、平成12年には、本人の親族が約90%と圧倒的に親族が多く(子が最も多い)、親族以外の第三者(司法書士、弁護士、社会福祉士等)は10%弱にすぎなかったのに対し、令和4年になると、本人の親族は19.1%まで減り、親族以外の第三者は80.9%と大きく増えました。
(6)親族を候補者としても実際に親族が後見人に選任されることは少ないか?
ご本人の親族が後見人等に選任される割合は年々低下していますが、そのためか、親族を候補者としても後見人等には選任して貰えないのですか?と聞かれることがあります。
しかし、そのような事実はなく、本人の親族が後見人等になる割合が少ない原因は、親族を「候補者」とする申立自体が年々減少しているためだと分析されています。
つまり、親族を候補者として申立てる場合は、むしろ、その親族が後見人等に選任されないケースの方が少ないと考えて良いでしょう。
参考まで、親族を後見人等の候補者として申立てた事案で、その候補者が選任されないケースとして挙げられるのは、例えば、親族間に意見の対立があるケース、ご本人が候補者親族を選任することに反対しているケース、候補者がご本人の財産を投資等により運用する目的で申立をしているケースなどです。
【2023年12月21日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか